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回復期慢性期

下痢の看護計画 アセスメントやケア方法 便秘の種類・メカニズム -

下痢の看護計画 アセスメントやケア方法 便秘の種類・メカニズム>

下痢は医学的には「1日3回以上の軟便または水様便」と定義されています1)。誰でも経験したことのある症状ですが、腹痛や頻回の排便によるQOL低下、重症化による脱水など、患者さんの生活に大きな影響を及ぼすものです。
本コンテンツでは、下痢の観察項目やアセスメントなどの看護計画、また緩和方法やケアについて解説します。

監修者からのメッセージ

横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授 中島 淳先生
下痢は、看護を必要とする患者さんにとっては、日常生活を送る上で大きな障害となることがあります。
患者さんに笑顔で過ごしていただくために、ぜひ下痢症状、下痢の看護計画について正しい知識を学びましょう。

目次

下痢の看護計画と看護目標

下痢の背景には、患者さんの生活環境、既往歴や心理的ストレスなどさまざまな要因がからみ合っています。そのため下痢の看護計画では、下痢そのものの症状に加え、背景にある原因を考慮して立案することが重要です。

看護問題と看護目標

下痢のある患者さんの看護問題および看護目標として考えられるものを紹介します。

  • 看護問題:脱水症を伴う下痢
    看護目標:脱水症状の改善
    脱水症状があるため、まずはその改善を優先的に対処すべき問題と考えます。
  • 看護問題:感染症による下痢
    看護目標:他者に感染させる懸念をなくす
    下痢や嘔吐、発熱の症状緩和に加え、下痢の適切な処理方法など、患者さんやご家族が感染しない/させないような指導を行います。
  • 看護問題:術後の下痢
    看護目標:症状緩和によるQOL改善
    胃や腸の手術後は、消化吸収の機能が低下するため下痢を起こしやすくなります。
  • 看護問題:疾患や薬物療法に伴う下痢
    看護目標:症状の緩和
    原因疾患の治療に前向きに取り組んでいただくために、まず下痢による苦痛の緩和が必要な場合があります。
  • 看護問題:不適切な食事療法・栄養剤の使用
    看護目標:下痢によい食事、適切な栄養剤の使用
    不適切な食生活や食事療法が守られていないために起こる下痢の場合は、長期的な目標として正しい食生活の知識を患者さんに持ってもらうことも重要です。経管栄養剤による下痢の場合は、適切な栄養剤に変更することも目標の一つです。
  • 看護問題:下痢に伴う皮膚トラブル
    看護目標:皮膚トラブルの改善
    下痢による肛門周囲のびらんなどは、よくみられるトラブルです。症状改善に加え、患者さん自身が皮膚トラブルを予防できるようなセルフケアの指導も重要です。

下痢の看護計画

下痢の看護計画について、観察計画(OP)、ケア計画(TP)、教育計画(EP)ごとにご紹介します。

下痢の観察計画(OP)

OPでは、目や耳で得られた観察結果より、下痢の具体的な状況を明確にします。それにより、優先すべきケアや必要な対処方法を判断します。

  • 下痢の回数、性状、量
    下痢の原因や背景疾患を判断する根拠になることがあります。
  • 通常時の排便状況
    下痢の状態を正しく評価するために、比較対象として通常時の排便状況を確認しましょう。
  • 下痢以外の症状の有無
    嘔吐や発熱、倦怠感、腹痛などがあるかどうかを確認しましょう。
  • 考えられる原因
    食べたもの・栄養剤で思い当たるものがある場合はその内容、手術や特定の疾患、服用中薬剤がある場合はそれを確認します。
  • 検査データの確認
    下痢の原因や腸の状態、脱水などの詳細な評価に必要となります。

下痢のケア計画(TP)

TPでは、実際に実施するケアを抽出します。

  • 水・電解質の補充
    脱水の程度に応じて、経口補水液や輸液によるケアを行います。
  • 肛門周囲の皮膚のケア
    下痢便に含まれる消化酵素が皮膚に付着すると、表皮がアルカリ性に傾くため皮膚トラブルが起きやすく、結果として細菌感染を引き起こすこともあります2,3)。肛門部の清拭や洗浄、座浴や臀部浴などを行い、状態悪化を防ぎます。
  • 食事療法
    下痢の状態に応じた食事療法を検討します。一般には食物繊維が少なく消化の良い食品が適しており、下痢の程度に応じた形態(便の硬さと同様の硬さを目安とする)で提供します。ただし下痢が激しいときは、絶食して水分のみを摂取します2)
  • 栄養剤の種類・投与量などの調整
    経管栄養剤による下痢の場合は、適切な栄養剤に変更したり、投与量や速度を見直すことも必要です。
  • 排泄物処理時の感染対策
    感染症が疑われる場合は、患者さん自身に手洗いを徹底させる、便の処理を適切に行うなど、二次感染を防ぐ対策をとりましょう。

下痢の教育計画(EP)

EPでは、患者さんが良い状態を維持するために必要と考えられる教育的援助の内容を決定します。

  • 食事や水分に関する指導
    下痢の原因となっていた食習慣や特定の食品を理解してもらい、日常の中で注意できるように指導します。また水分補給の重要性を知ってもらうようにしましょう。
  • 下痢止め薬の使い方
    下痢のタイプによっては症状を悪化させる可能性があるため、医師の指示に従って使用するように指導しましょう。
  • 下痢のセルフケア
    安静にして暖かくすることや、冷たすぎない飲み物をゆっくりと摂ることなど、自宅でできるケア方法を伝えるのもよいでしょう。

下痢の観察項目とアセスメント

下痢のアセスメントでは、看護計画を立案するにあたって必要となる情報を収集するためには、以下のような枠組みで観察と得られた結果の分類を行うとよいでしょう。

  • 患者さんの全般的な状態
    既往歴や服薬状況、検査データ(発熱の有無や血圧、呼吸状態)など
  • 患者さんやご家族の訴え
    激しい下痢、食事が摂れない、吐き気がある、など
  • 看護者の観察結果
    下痢の程度(下表)、表情(比較的安楽、苦しそうなど)など
    下痢では一般に緩い、または水のような便が排泄されますが、その程度を客観的に判定するために、ブリストルスケールによる分類を理解しておきましょう。

下痢を見分けるポイント


  • 白~うすい黄色:ロタウイルス感染症など4)
    血液が混じる :細菌感染5)、大腸がん6)など
    鮮血色 :虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎、赤痢、サルモネラ菌感染症など6-8)

  • 1リットルを超えるような大量の水下痢は、分泌性下痢が疑われます9)
  • 食事内容
    牛乳など乳製品 :乳糖不耐症
    豆類、玄米、海藻類など :水様性食物繊維の過剰摂取
    十分に加熱されていない肉類、魚介類など :食中毒
  • 下痢以外の症状
    腹痛、嘔吐、発熱、体重減少、倦怠感などの有無を確認します。
  • 下痢の経過、発症の状況
    原因から発症までの期間、絶食により改善するかどうか、同じものを食べた人に同様の症状があるかなどのほか、服用している薬剤の有無、手術歴や基礎疾患の有無を確認します。

下痢症状を緩和させるケア

下痢に対するケアの基本は、安静と保温、水分補給です。また肛門周囲の皮膚トラブルに対するケアも重要です3)

  • 脱水予防のため、温かい飲み物をゆっくり、少しずつ飲むようにします。冷たいものは腸への刺激となるため、避けましょう。
  • 体を動かすと腸が刺激されるため、安静を保ち、十分に休息をとります。
  • 毛布や衣服、カイロでおなかを温めると、腸の動きが静まり、腹痛の緩和にもなります。
    ただし出血を伴う下痢の場合は、温めないでください。
  • 肛門部はアルコールを使用していない清浄綿、座浴、臀部浴などで清潔を保ちましょう。
  • 経管栄養剤による下痢の場合は、適切な栄養剤に変更することや、投与内容を見直しましょう。

下痢とは? 原因とそのメカニズム

下痢は、「日に3回以上の軟便または水様便」、または「便に含まれる水分量が200mL以上で、重量が200g以上となった場合」と定義されています1, 10)
下痢の原因は多岐にわたり、また発症メカニズムにも種類があります。

下痢の分類

下痢の分類を知っておくことで、患者さんの状態や下痢の原因、必要なケアの判断がしやすくなります。

発症メカニズムによる分類

下痢は、その発症メカニズムによって大きく4つに分類することができます。

浸透圧性下痢

腸管内の浸透圧が高まって浸透圧差が生じるため、水分が腸管内に移動して便中の水分量が増加することにより下痢となります11)。原因物質を経口摂取することで起きるため、絶食で消失します9)

  • 考えられる原因
    牛乳による乳糖不耐症(※)、人工甘味料など吸収しづらい食品、高浸透圧の栄養剤など11, 12)
    • 乳糖不耐症による下痢は、牛乳に含まれる糖質である乳糖が分解できないために起こる下痢です。乳糖は小腸の粘膜に存在する乳糖分解酵素(ラクターゼ)によって分解されたあと体内に吸収されますが、人によってはこのラクターゼの量が少ないため、分解されないまま小腸を通過した乳糖が大腸内の浸透圧を高め、それによって浸透圧性下痢が生じるとされています。
      乳糖不耐症の人は、乳糖を分解処理した牛乳が商品化されていますので、そのような製品を選ぶとよいでしょう。なお乳製品に対するアレルギーとは異なりますので、症状がある場合はきちんと鑑別することが重要です13)

滲出性下痢

感染症や炎症により腸管からの浸出液が増えることで起こる下痢です。同時に、腸管の粘膜が障害されるために水分と電解質の吸収が低下することも関係します11)。原因疾患の治療や、下痢止めや整腸剤による薬物療法で対処します。

  • 考えられる原因
    炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)、感染症(サルモネラ菌感染症、カンピロバクター感染症など)など2, 9)

分泌性下痢

腸に入った細菌の毒素、またはホルモンの影響で腸管粘膜から大量に腸液が分泌され、吸収量とのバランスが崩れることで起こる下痢です。1リットルを超える大量の水様性下痢が特徴です11)

  • 考えられる原因
    感染症(コレラ、大腸菌など)、消化管疾患など2)

腸管運動性下痢/胆汁酸性下痢

腸のぜん動運動が活発になりすぎて、腸の内容物が短時間で腸を通過してしまい、十分に水分が吸収されないために下痢となります(イラスト左)。反対に、ぜん動運動が低下して腸の内容物が停滞してしまい、腸内に細菌が増殖して抱合により不活化された胆汁酸が脱抱合され、その刺激により下痢になる場合もあります(イラスト右)11)
胆汁酸は肝臓で作られる物質で、脂肪の消化吸収に関与しています14)。胆汁酸は大腸内で水分を分泌したり腸管運動を亢進したりするため、大腸内に胆汁酸が過剰になると下痢を引き起こすことが知られています15, 16)
経腸栄養をしている患者さんでは、ぜん動運動低下による下痢がみられることがあります。この場合は、栄養剤の投与速度や量を考慮して対応します。

  • 考えられる原因
    過敏性大腸症候群や甲状腺機能亢進症などによるぜん動運動の亢進、糖尿病や強皮症によるぜん動運動の低下、経腸栄養による長期の絶食2)、胆汁酸の吸収障害による腸管内の胆汁酸過剰

期間による分類

急性下痢:4週間以内に収まる下痢で、感染症や薬剤、食物によるものが多くみられます11)
慢性下痢:4週間以上続く下痢で、何らかの疾患が背景にあることが多くあります11)

発生原因による分類

内因性:疾患による下痢など、体の中に原因がある下痢です17)
外因性:食べすぎ・飲みすぎや服用している薬剤によるものなど、体の外に原因がある下痢です17)

性状による分類

一般によくみられる水様性下痢のほか、血液の混じる血性下痢、血液とともに粘液の混じる粘血性下痢などがあります11)

年齢別にみる下痢の症状

下痢の重症化がときに生命を脅かす可能性のある高齢者と小児について、よくみられる下痢の特徴をご紹介します。