icone

回復期慢性期

便秘の看護計画 アセスメントやケア方法、便秘の種類・メカニズム -

便秘の看護計画 アセスメントやケア方法、便秘の種類・メカニズム>

便秘は医療的な対応が必要な状態と見なされることはあまりなく、そのままになっている患者さんが多いと考えられます1)。そのため便秘を起こしていそうな状態の患者さんを見極め、こちらから状況を聴取するなど、先んじての対応ができるとよいでしょう。
本コンテンツでは、便秘の観察項目やアセスメントなどの看護計画、またケアや年齢別の対処法について解説します。

監修者からのメッセージ

横浜市立大学大学院医学研究科 肝胆膵消化器病学教室 主任教授 中島 淳先生
便秘の背景にはさまざまな要素が影響しているため、便秘の看護では、いろいろな状況や可能性を考慮しながら、しっかりと患者さんを看ることが求められます。
このコンテンツで、便秘についての知識を学び、普段の看護に取り入れてみましょう。

目次

便秘の看護計画と看護目標

便秘に悩む患者さんは多くいらっしゃいますが、対処が必要と思われなかったり、なかなか相談しづらかったりという方が多く、そのままとなっていることがよくあります。
自然で苦痛のない排便は、どんな人にとっても快適な生活に欠かせないものです。患者さんがよい排便習慣を形成できることを目指して看護を行うようにしましょう。

看護問題と看護目標

便秘のある患者さんの看護問題および看護目標として考えられるものを紹介します。

  • 看護問題:下剤に頼った排便
    看護目標:自然な排便習慣の形成
    不適切な下剤の使用で自然な排便が難しくなっている場合は、食生活の改善や排便習慣の習得によって、自力での自然な排便を目指します。
  • 看護問題:自力排便が困難な高齢者の便秘
    看護目標:力排便に必要な筋力の獲得
    高齢者は、筋力低下のため排便の際にうまくいきむことができず、便秘になることがあります2)。基礎疾患など特別な配慮が必要でない限りは、できる範囲で活動量を増やし、自力での排便ができる状態を目指します。
  • 看護問題:抗がん剤の副作用としての便秘
    看護目標:抗がん剤を継続しながら便秘症状を緩和する
    薬剤による便秘の場合、ほかの疾患を悪化させないために、お薬の服用は継続する必要があります。適切な下剤の使用によって便秘症状を緩和することを目指しますが、下剤が乱用されたり自己中断されないように、看護者の支援が必要です。
  • 看護問題:術後の便秘
    看護目標:症状緩和によるQOL改善
    消化器や泌尿器・婦人科系の手術後に便秘がみられることがあります。
  • 看護問題:経管栄養に伴う便秘
    看護目標:適切な栄養剤の使用
    食物繊維不足による便秘が起こることがあります。食物繊維を多く含む製品や、腸内環境改善が期待できる製品への変更を検討します。

便秘の看護計画

便秘の看護計画について、観察計画(OP)、ケア計画(TP)、教育計画(EP)ごとにご紹介します。

便秘の観察計画(OP)

OPでは、目や耳で得られた観察結果より、便秘の具体的な状況を明確にします。それにより、便秘の原因や病態、必要な対処方法を判断します。

  • 排便の回数、時刻、かかった時間、便の性状など
    排便困難感の有無や便の硬さ・大きさなども聴取し、便秘の経過、おおよその原因の判断材料とします。
  • 通常時の排便状況
    便秘の状態を正しく評価するために、比較対象として通常時の排便状況を確認しましょう。
  • 便秘以外の症状の有無
    お腹の張りや腹痛、吐き気・嘔吐、硬便による肛門部のトラブルや痔、強いいきみによる血圧上昇などが考えられます。
  • 考えられる原因
    不規則な食事や食事量・水分量の不足、運動不足、環境の変化やストレスの有無を確認します。また手術や特定の疾患、服用中薬剤がある場合はそれを確認します。
  • 便秘による疾患や状態悪化の有無
    強いいきみによる心血管系への負担から高血圧や心血管疾患が悪化するなど、便秘が影響するような疾患がないかを確認します。
  • 視診・触診結果、検査データの確認
    腸の状態、便秘の重症度の評価に必要となります。

便秘のケア計画(TP)

TPでは、実際に実施するケアを抽出します。

  • 食事、水分摂取の指導
    適正な食事量や水分量を指導します。食事内容としては、一般に食物繊維を多く含む食品や、腸を刺激する冷たい飲み物、腸内環境を改善するプレバイオティクスを含む食品が推奨されます。
    なお食物繊維には水溶性と不溶性があり、水溶性食物繊維には便を形成したりかさを増やす働き、不溶性食物繊維は胃や腸で膨張することで腸のぜん動運動を促進する働きを持ちます3,4)
    しかし食物繊維の摂りすぎはかえって便秘を悪化させることもあるため5)、適量を摂取するように指導しましょう。
  • 排便習慣の習得
    毎日決まった時間(できれば朝食後)にトイレに行くように指導します。
  • 腸のぜん動運動改善のためのケア
    腹部のマッサージ、温罨法、つぼ療法などがあります。
  • 浣腸、座薬、摘便
    強いいきみで血圧上昇や肛門裂傷のおそれがある場合は、浣腸や座薬、摘便によって便を排出させます。
  • 栄養剤の種類・投与量などの調整
    経管栄養剤による下痢の場合は、適切な栄養剤に変更したり、投与量や速度を見直すことも必要です。
  • 薬物療法の管理
    必要な場合は、処方された下剤が適切に服用されるように管理します。

便秘の教育計画(EP)

EPでは、患者さんが良い状態を維持するために必要と考えられる教育的援助の内容を決定します。

  • 食事や水分に関する指導
    適度に柔らかく十分な量の便を形成するための食事と水分について指導します。経管栄養の患者さんの場合は、食物繊維やプレバイオティクスを含む製品を提案してもよいでしょう。
  • 下剤の使い方
    下剤の乱用や自己中断を防ぐために、正しい使い方をきちんと説明しましょう。
  • 排便習慣の指導
    毎日決まった時間にトイレに行く、便意を感じたらがまんしない、適度に体を動かすなど、自然な排便に必要な習慣を指導します。

高齢者・小児の便秘

便秘は加齢に伴って増加するとともに、小児にも珍しくない症状です。しかし便秘の背景にある要因は、小児と高齢者では大きく異なるため、看護する際はそれぞれの特徴を知っておく必要があります。

下痢を見分けるポイント

一般に高齢者は食事量や筋力が低下しているため、便秘になりやすい状態です。また食事・筋力に問題はなくても、直腸の排便センサーが鈍っているために便秘となることもあります2)
さらに高齢者では、他疾患の薬物療法による薬剤性便秘、糖尿病など全身性の病気による症候性便秘、大腸がんなど腸そのものの障害による器質性便秘も考えられます。
近年では、強いいきみによる心臓への負担が心血管疾患による死亡率を高めることや、慢性便秘があると慢性腎臓病を発症する確率が高いことなど、便秘と生命に関わるような病気との関連が報告されています2)
便秘症状そのものの緩和だけでなく、生命を守るという観点からも、高齢者の便秘には積極的に対応する必要があります。

高齢者の便秘の看護目標

  • 介護者の負担軽減
    在宅療養を受ける高齢者の場合、介護者の負担を減らすことも重要な看護目標の一つです。下剤による柔らかすぎる便や頻回の排便を改善することで、排泄物処理に伴う負担を軽減します。
  • 患者本人の負担軽減
    適切なケアにより、下剤による腹痛や、浣腸や摘便などの処置に対する羞恥心・精神的苦痛の軽減を目指します。
  • 肛門部の皮膚トラブル軽減
    硬便や下剤による水様便で、肛門裂傷やびらんなどの皮膚トラブルを起こしている場合があります。便秘症状の緩和によりそれらのトラブルを回避することは、患者さん本人および介護者双方のQOLを向上させます。

高齢者の便秘の看護計画

  • 高齢者の看護計画では、自力排便に影響する筋力や日常生活動作の能力、食生活をよく観察して対処を考えるようにしましょう。経管栄養の方の場合は、栄養剤の組成も重要なポイントです。
    また別の疾患で服薬している場合はその内容、便秘に対して下剤を使用している場合はその種類と使い方を確認します。
  • 自分だけでトイレに立つことが難しかったり、おむつを着用している患者さんの場合は、介護者が継続的に実行できるようなマッサージやつぼ療法、食生活のヒントなどを指導するとよいでしょう。
  • 在宅療養を受ける高齢者にとって、排泄は自尊心に関わる重要な問題です。症状の聴取や視診・触診、ケアや処置の際は、患者さんの羞恥心や自尊心に配慮しましょう。

小児の便秘の看護計画

小児の慢性便秘は、離乳食を始めるころ、トイレトレーニングを始めるころ、通学を始めるころなどをきっかけに発症することが多いとされ6)、そのほとんどが疾患を伴わない機能性便秘です7)
また学童・思春期では、過敏性腸症候群による便秘も考えられます。過敏性腸症候群による便秘はストレスで悪化することが特徴です。また、下痢と便秘の両方を繰り返すタイプの過敏性腸症候群もあります8)
小児の便秘を引き起こすような疾患としては、直腸肛門奇形などの外科的疾患、糖尿病などの内科的疾患が挙げられます6)

小児の便秘の看護目標

  • 痛みのない排便
    苦痛なく排泄できるような適度な柔らかさの便、排便に対する回避感情のない状態を目指します。排便時の痛みはその後の排便トラブルのきっかけともなるため、年少児では特に、積極的にケアしていくことが必要です9)
  • 養育者が自信をもって患児の便秘に対応できる状態
    排泄の後処理の多さや患児が排便時に痛がる様子は、養育者にいら立ちや無力感を感じさせるため、養育者の負担軽減も考慮する必要があります。
  • 健全な排便習慣の形成
    年齢や発達状況に応じた排便訓練や、生活習慣の見直しによる排便習慣の形成を目指します。
  • 養育者による排便訓練・生活管理の長期継続
    排便習慣はすぐには身に付かないため、養育者は長期にわたって排便訓練や生活の管理を行う必要があります。途中離脱を防ぐために、看護者からの適切な支援が必要です。

小児の便秘の看護計画

  • 基本的な観察項目に加え、養育者および患児が排便に対してどのような意識を持っているかを確認しましょう。排便に強い拒否感があったり、養育者が子どもの状態について自責感を持っている、などのことがあります。
    また患児本人の発達状況や、偏食の有無なども確認しておきましょう。
  • ケアおよび教育では、養育者のモチベーションを保つ工夫をしましょう。排便訓練では、子どもが達成しやすい小さな目標を提示することで、患児・養育者双方が「自分でできた!」という思いを持つことができます。また子どもの変化を養育者にフィードバックすることも、治療継続のモチベーションとなるでしょう。

便秘の観察項目とアセスメント

便秘のアセスメントでは、看護計画を立案するにあたって必要となる情報を収集するために、以下のような枠組みで観察と得られた結果の分類を行うとよいでしょう。

  • 患者さんの全般的な状態
    既往歴や服薬状況、便秘に対して治療を行っている場合はその内容など
  • 排便の状況
    排便時の痛みや回数、視診や触診の結果、症状の出現期間など
  • 患者さんやご家族の訴え
    お腹の張り、吐き気がある、頭痛があるなど
  • 看護者の観察結果
    便の性状(下表)、便秘に対する患者の知識、排便に対する患者の意識など
    便が腸管内に長く留まっているタイプの便秘では、便の水分が吸収されるため、硬い便となります。
    便秘の状態や程度を知るための一つの方法として、ブリストルスケールによる分類を理解しておきましょう。

便秘症状を緩和させるケア

便秘症状を直接緩和するケアとしては、腸のぜん動運動を促進するようなケアや、排泄困難な便の排出介助が挙げられます。また硬便による肛門裂傷がある場合は、それに対処するケアも必要となります。

  • 温罨法は、排便回数を増加させ、下剤の使用頻度を低下させることが報告されています。高齢者、術後の患者さん、透析中の患者さんでも便秘を改善したという研究結果があり、安全な方法として知られていますが、施行前には褥瘡の有無など皮膚の状態、意識の状態や全身状態を確認して行うようにしましょう10)
  • つぼ療法は、大巨や天枢といったつぼを適度に刺激することで内臓の機能を高めるために行われます11)
  • 便秘に対する腹部マッサージは腹壁マッサージとよばれ、腸に沿って「の」の字を書くようにお腹をマッサージするものです。慢性便秘のガイドラインでは弱い推奨とされていますが12)、患者さんやご家族自身でも気軽に実行していただけるケア方法です。
  • 精神的なストレスも、便秘の原因となります。また排便に関することはなかなか人に相談しづらいため、看護者の受容的な態度や声がけなどの精神的な援助が、便秘の改善につながることもあります。
  • 経管栄養剤を使用している場合は、腸内改善に配慮した栄養剤に変更することや、投与内容を見直しましょう。

便秘とは? 原因とそのメカニズム

便秘は、日本消化器病学会では、「本来体外に排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています12)
腸そのものが変化して便を出しづらくなっているもの、便意があっても出せないもの、便そのものが少なくなっているものなど、さまざまなタイプがあります。

便秘の分類

便秘の分類には、原因によるものや発症期間によるものなどがあります。

原因による分類

便秘は、大元の原因やどのような症状があるかによって分類されます12)

機能性便秘

機能性便秘とは、器質的変化(腸そのものに対する変化)はなく、排便機能の障害によって生じる便秘です13)。機能性便秘は、さらに症状によって排便回数減少型排便困難型に分類され、さらに病態によって大腸通過遅延型大腸通過正常型機能性便排出障害に分類されます(表)12)

器質性便秘

器質性便秘は、狭窄性と非狭窄性に分類されます(表)12)

便秘の期間による分類

急性におきる便秘か、慢性的な便秘かによる分類も行われます14)
急性の器質性便秘は大腸がんや術後の腸の癒着などが原因で起きるもので、一般に強い腹痛があるとされ、迅速な対応が必要です。急性の機能性便秘には、旅行など環境の変化による一過性のものが挙げられます。
慢性便秘は、6か月以上前から排便時の強いいきみ、排出困難感、残便感、排便回数が週3回未満、要排便介助、硬便などの症状が続き、直近の3か月は2つ以上の症状があらわれている状態、と定義されています。

まとめ

便秘には、食生活や排便習慣の乱れによって起きるもののほか、服用している薬剤の副作用としての便秘や、全身性の病気の症状としてあらわれる便秘、腸そのものの変化に起因する便秘があります。
ありふれた症状のため重要視されずにそのまま放置されがちですが、慢性的な便秘は心血管疾患や慢性腎臓病など、生命にも関わる病気の発症の契機となることがわかっています。
便秘のある患者さんを看護する際には、特定の原因がない限りはまず食事指導と排便習慣についての指導を行いますが、患者さんの年齢によってそれぞれ考慮すべきポイントは異なります。
便秘は排泄というデリケートな問題に関わるため、症状に限らず介護者の状況や長期的な支援など、幅広い視野をもって看護にあたることが求められます。

引用文献
  1. 畠山明子:YORi-SOUがんナーシング.2020;10(6):595-8.
  2. 中島淳ほか:日本老年医学会雑誌. 2020;57(4):406-13.
  3. 積美保子:MB Med Reha. 2019;233:57-61.
  4. 伊東明美ほか:臨床栄養. 1998;92(6):608.
  5. 厚生労働省:e-ヘルスネット「便秘と食習慣」
    https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-010.html 2022年3月21日閲覧)
  6. 日本小児栄養消化器肝臓学会・日本小児消化管機能研究:小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン, 第1版, 2013, 診断と治療社, p46-54.
  7. 土井賢治:小児科診療. 2014;77(suppl):25-6.
  8. 藤井智香子ほか:Jpn J Psychosom Med. 2021;61(1):57-63.
  9. 羽鳥麗子:小児内科. 2015;47(1):69-74.
  10. 日本看護技術学会 技術研究成果検討委員会 温罨法班:便秘症状の緩和のための温罨法Q&A Ver.4.0, 2021年2月
  11. 小田 正枝編著:アセスメント・看護計画がわかる 症状別看護過程 第2版. 2021, 照林社, p205-18.
  12. 日本消化器病学会関連研究会慢性便秘の診断・治療研究会編:慢性便秘症診療ガイドライン2017.南江堂,東京,2017.
  13. 尾髙健夫:日内会誌. 2019;108(1):10-5.
  14. 水上健:消化器ナーシング. 2021;26(11):1091-3.
参考文献
  • 小田 正枝編著:アセスメント・看護計画がわかる 症状別看護過程 第2版. 2021, 照林社, p205-18.
  • 大口 祐矢著:看護の現場ですぐに役立つ症状別看護過程. 2020, 秀和システム, p122-9.
  • 馬見塚勝郎:診断と治療. 2018;1O6(7):833-8.
  • 鈴木千琴:日本小児看護学会誌. 2021;30:52-60.
  • 鈴木千琴:小児保健研究. 2018;77(5):413-22.